マダガスカルには数多くの特殊な固有種が生息していますが、なんと島の生物の8割以上が固有種です。つまり、私たちが目にする生物のほとんどが、この島以外には存在しない種ということになります。そして悲しいことに、その大半が現在は絶滅危惧種に指定されています。
長きにわたり人類が定住しなかった孤立した島では、天敵となる外来種が存在しなかったため、固有の生物たちが独自の進化を遂げてきました。しかし、人類がマダガスカルに入り込んで以降、多くの生物がヒトの手によって絶滅へと追いやられたのです。 ほんの10世紀前まで存在していた、体重500kgにも及ぶ飛べない巨鳥「エピオルニウス」、ヒトほどの背丈があったジャイアントキツネザルの「メガラダピス」、現存種の1/10ほどの大きさ(推定体重200kg弱)だった「コビトカバ」など、今ではもう目にすることのできない絶滅種たちがそれを物語っています。これら現存する貴重な種を絶滅から救い出すこと――それこそが、私の宿命だと感じています。
それでは、カメレオン観察の続きをご覧ください。

「パーソンカメレオン」のオス。 ど迫力の顔とバッチリ目が合った、面白いカメラショットが撮れました。「野生のカメレオンを真正面から撮影できるなんて珍しい」と思うかもしれません。確かに野生個体は、ペット飼育の場合とは違って捕食者への警戒心が強く、縄張り争いやメスの奪い合いで常に周囲に気を配っています。しかし、彼らは私に気づくと明らかな敵対行動(威嚇)をとるため、実はかえって良いアングルのショットを狙いやすくなるのです。
深いダークトーンの体色をベースに、鮮やかなターコイズブルーのライン斑点が実に見事です。カメレオンの体色がここまで濃くなるのは(病気や妊娠時を除けば)、警戒や興奮によるディスプレイ(自己表現)の証拠です。この画像でも喉元を膨らませ、姿勢を低くしていますよね。これは体を大きく見せるための典型的な威嚇行動で、興奮や警戒が最高潮に達しているサインです。 怖がらせてしまってごめんね。でも、危害を加えるつもりはないから安心してください。それにしても、本当にいい表情です!

「ヒロクチミツノカメレオン/テングカメレオン(学名:Calumma nasutum)」 Calumma属のこのグループは、総称して「ミツノカメレオン」と分類されることが多く、研究者によって分類上の呼び名が異なることがあります。日本では、ペットとして流通する際に「テングカメレオン」と呼ばれるのが一般的です。「三つの角」と書きますが、実際には3本ではなく、1本の突起角を持っています。

目の後方にあるカスク(後頭部の出っ張り)が黒い帯で縁取られ、そこから広がる明るい緑色のカラーリングが非常にクールです。 ところで、一部のネット情報で「果物を食べる雑食性」と書かれている記事を散見しますが、これは間違いです。カメレオンは全種が昆虫食・肉食ですので、混同しないようご注意ください。ネット上の誤った情報が独り歩きし、誰かが書いた間違いがそのままコピペされて広がっているようです。現地の研究者を含め、マダガスカルで果物を食べるカメレオンを目撃した人は一人もいません。

「パンサーカメレオン」のオス。 最初に紹介したパーソンカメレオンと同様に、深いダークトーンをベースに、皮膚の奥にある明るい色素が体表に現れています。この状態もまた、激しい威嚇や興奮、強い警戒を表しています。 パンサーカメレオンは普段、周囲の環境に溶け込むよう緑色などに擬態していることがほとんどです。つまりこの個体は、私を警戒するためにかなりのエネルギーを費やして威嚇を主張していることになります。 カメレオンさん、興奮させて本当にごめんなさい。それにしても、わずか数分の間に緑色からここまでの変色を見せる生命力には、やはり圧倒されます。

「パーソンカメレオン」のオス(2個体目)。 本来は温厚な性質を持つパーソンカメレオンですが、突然の訪問者に口を大きく開け、MAXの警戒反応を示しています。以前「パーソンカメレオンとエレファントカメレオンは口の中が黄色い」とお話ししましたが、この個体は口角の一部こそ黄色いものの、口腔内は黄色くありません。実は、こうした薄い桃色もパーソンカメレオンに見られる口腔内の特徴です。 では、これらは別種なのでしょうか? 答えはノーです。マダガスカルは非常に広大で、雨季・乾季の気候差や、東西南北、さらに離島などの地理的要因によって、地域特有の変異(地域種)が大きく発現します。オスの体色は地味な褐色が多いとされますが、緑の葉が茂る高い枝にいたこの個体は、見事な緑色をしていました。 カメレオンの種同定は、年齢、雌雄、地域、季節、体調、繁殖状態、温度、湿度、そしてその時の状況によって目まぐるしく変化します。そのため、写真1枚だけでは判断がつかないことも多く、現地の研究者の間でも意見が分かれるほどです。 しかし、その複雑なモザイクを一つひとつ読み解いていくことこそが、生物学の本当の醍醐味だと言えます。