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マダガスカルのカメレオン その2

  日本の約1.6倍の面積を持つ島国マダガスカル。その広大な本島は、中央部に位置する首都アンタナナリボが高原地帯になっていることもあり、東西南北への移動が一筋縄ではいきません。これだけ広い国土でありながら、なんと国道は東西と南北に走るわずか4本のみ。そのため、いたる所で激しい渋滞が発生します。 しかも、首都の街中でさえ舗装されている道路は少なく、穴だらけのでこぼこ道ばかり。そんな悪路を2か月弱、距離にして2,300㎞ほど走破したのですが、驚いたことに一度も信号機を見かけませんでした。 それでいて交通事故をほとんど目にしなかったのは、歩行者もドライバーも互いに見事なコントロールで譲り合っているからでしょう。大型トラック、ポンコツタクシー、バイク、三輪のツクツク、そして……まさかの牛車! 道路を堂々と牛が歩いている光景は、想像すらしていませんでした。 地方道ともなればさらに過酷で、4WDのトラックやバギークラスでなければ走れません。「ブルドーザーを持ってきてくれ!」と叫びたくなるような道もあり、運転は本当に骨が折れました。

しかし、そんな疲れも「野生のカメレオンを探したい」という情熱で吹き飛びます。毎日、東へ西へと車を走らせていたある日の昼下がりのことでした。 人気のない街はずれの砂利道を走っていると、前方を4足歩行の小さな生き物が横切るのが見えました。急ブレーキを踏んで車外に飛び出すと、ネズミかと思っていたその影は、なんとカメレオンだったのです!

カメレオンが道の上を普通に歩いているなんて思ってもみなかったので、本当に驚きました。保護区でもない、完全な野生の個体にこんな風に出会えるなんて、どれほどの幸運でしょうか。 込み上げる嬉しさと感動のまま、車に轢かれては危ないと思い、まずはそっと捕まえることにしました。

(その時の動画がこちらです)https://www.youtube.com/shorts/WvrpQuthsrE

エレファントカメレオン

エレ放カメ https://youtube.com/shorts/jEFSb8VtpMY?feature=share

カメレオンといえば「おとなしい生き物」というイメージがありましたが、やはり野生の個体は違います。激しく暴れ、口を大きく開けて威嚇してくるだけでなく、噛みつこうとまでしてきたのです。これには肝を冷やしました。

その後、近くの草むらにそっと放して帰ってもらいました。なかなかのサイズだったので、4〜5歳くらいにはなっていたのかもしれません。直接手で触れたその体は、驚くほど強靭で力強いものでした。「出会ってくれてありがとう、ずっと元気でね」と声をかけ、再び車を発進させました。

このとき出会ったのは「エレファントカメレオン」という、カメレオンの中でも大型の種類です。学名はショートホーンカメレオン(Calumma brevicorne)。 頭の後ろにある皮膚の広がりがゾウの耳のように見えることからその名がつきました。今回遭遇したのはメスで、オスには立派な角があります。 特技は口を大きく開けた威嚇。敵を驚かせるための警告色として、口の中が鮮やかな黄色をしているのが特徴です。体色は褐色からグレーをベースに、耳のへりや目の周りには白や黄色の斑紋があり、体の側面には一本の白いストライプが走っています。背中にある棘状の突起(背稜)がきれいに整列している様子や、ゴツゴツとした鱗の質感には、圧倒的な野生美を感じます。

また、明らかにエレファントカメレオンは鱗のごつごつした感じや、背の棘がはっきりしている点。体幹の白や黒などの斑紋が異なります。

ちなみに、同じくマダガスカルに生息する世界最大級の「パーソンカメレオン」に比べ、鼻先の角が短いことから「ショートホーン」という学名がついたのでしょう。どちらも口の中は黄色いですが、パーソンカメレオンの方が一回り大きく、性格はどっしりとしていておとなしいのが特徴です。

この旅では、その後もあちこちの保護区でたくさんの個性豊かなカメレオンたちに出会うことができました。その一部を珍しい画像とともにご紹介します。

パーソンカメレオン(オス)

左右の鼻先に、立派な角のようなコブを持っています。非常におとなしい性質で寿命も8年以上と長いため、ペットとしても非常に人気の高い種類です。攻撃性が低いため、狩りは「待ち伏せ型」。獲物が目の前にやってくるのを、ひたすらじっと待つ忍耐強さを持っています。

パーソンカメレオン(メス)

メスにはオスのような鼻先の突起はなく、普段は派手さのない美しい緑色をしています。しかし、交尾を終えると体色が黒や濃い茶色へと一変します。飼育下では、この激変ぶりに「病気か死ぬ直前なのでは」と慌てる飼い主もいるほどです。 交尾後の抱卵期間は野生下で推定3カ月以上。一度に40個ほどもの卵を産みます。そして驚くべきは、産み落とされた卵が孵化するまでに「2年近く」もの歳月がかかる点です。これほど長い卵期を持つ爬虫類は極めて稀で、少なくとも一度は厳しい乾季を土の中で過ごさなければ孵化できない生態のようです。 日本でもキタキリギリスの卵が二度の冬を越えて初夏に孵化するケースがありますが、過酷な季節をやり過ごし、エサが豊富になる時期をじっと待つ自然のライフサイクルには、ただただ神秘を感じるばかりです。

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