2026年 3月から4月にかけて、日本から直線距離で11000㎞離れた島国マダガスカルへ生物の調査に行ってまいりました。
この時期を選んだのには重要な理由があります。マダガスカルの10月から4月までは雨季にあたり、期間中は道路や土地、家までもが数ヶ月間にわたって水没してしまいます。 日本にも梅雨はありますが、これほど大規模に移動が困難になることはありません。そのため、雨季が終わるこの一瞬のタイミングを狙う必要があったのです。
想像を絶する熱帯の洗礼と、過酷なジャングル
マダガスカルは赤道に近く、南回帰線内のエリアに位置するため、想像を超える強烈な日差しが照りつける熱帯地方です。日本とは次元が違う暑さで、私の場合、直射日光を浴びるとわずか5分で皮膚が火傷状態になるほどでした。
調査を開始した当初、無我夢中でジャングルを歩き始めた私は、強い日差しによりわずか10分で目眩と立ち眩みを起こし、暑さのあまりしばらくその場にうずくまって動けなくなってしまいました。

【画像:鬱蒼としたマダガスカルのジャングルの風景 】
さらに足元は滑りやすく、行く手を阻むブッシュ(茂み)ときつい上り下りが連続します。ジャングルの中は風が一切なく、蒸し風呂のような暑さですが、怪我や虫を防ぐために 半袖・半ズボンになるわけにはいきません。頭から虫よけネットをかぶり、だらだらと汗を流しながらの行軍です。
一方で、前を行く現地ガイドに目をやると、なんと半袖・半ズボンに裸足という軽装。彼らの超人っぷりには、驚きを通り越して少し恐怖すら覚えました。
マダガスカル独自の進化を遂げた植物たち
足掛け2ヶ月にわたり全土を探索する中で、多くの珍しい動植物に出会うことができました。その一部をご紹介します。
◆ トックリヤシの仲間(塊根植物)

【画像:トックリヤシの仲間の写真(根元が膨らんでいる木)】
乾季に水がなくなる環境に適応するため、根元に大量の水を蓄えられるよう独特の進化を遂げた植物です。世界中の多くのジャングルに行きましたが、マダガスカルがいかに「変わった動植物の宝庫」であるかを物語っています。
◆ カラディウム(サトイモの仲間)

【画像:カラディウムの写真(緑の葉に白やピンクの斑点があるもの)】
鮮やかな緑色の葉に、まるで絵の具を散らしたような白とピンクの斑点が入る美しい植物です。日本では観葉植物として人気ですが、自然のジャングルの中でもひときわ目を引く美しさでした。
◆ 野生のウツボカズラ(食虫植物)

【画像:野生のウツボカズラの写真】
こちらも観葉植物として有名ですが、野生の姿を見ることができました。興味深く中を覗いてみましたが、残念ながら虫は一匹も入っておらず……。大自然の中での罠の効率は、あまり良くないのかもしれません(笑)。
悲鳴を上げる体、そして憧れのカメレオンとの対面へ
今回の調査の一番の目的は、これまで他国でも調査を重ねてきた「カメレオン」です。
しかし、カメレオンは保護色や隠ぺい擬態の名手であり、なおかつ微動だにしません。 木の高い場所から地面まで、目を凝らして探し続ける日々は過酷そのもの。毎晩、首や腰など体のあちこちが悲鳴を上げていました。
何日も探し続けましたが、やはり自分だけの力で見つけるのは不可能です。 最終的には、雇用した現地のプロガイドに見つけてもらうことができました。
【画像:発見したパーソンカメレオンの写真】

出会えたのは、パーソンカメレオンのメス(または若いオス)の個体です。
メスは通常、非常に美しい緑色をしていますが、抱卵すると黒や濃い茶色へと劇的に変色する特徴があります。
なお、こうした保護区内への立ち入りは法律で厳しく取り締まられており、ガイドの同行が義務付けられています。仮に勝手に侵入しても、鬱蒼としたジャングルで迷えば確実に遭難し、それは文字通り「死」を意味します。
首や腰の痛みに耐え、命がけの行程を経て、ようやく憧れのカメレオンに会えたときの喜びはひとしおでした。