当院は北海道より野生動物の保護を依頼されています。また、環境省から希少動植物の保護員として長年従事しております。
野生動物が多いことは自然が豊かな証拠ですが、時として人や社会活動と足並みがそろわないことがあります。
しかし、人の手によって傷つけられた動物が目の前にいて、それを見て見ぬふりをできないこともあるでしょう。
そのような時に、どうしたらいいのかお話ししようと思います。
野鳥の保護とは、まず野鳥を発見したところから始まります。それはほとんどの場合、偶然性の高い出会いです。おそらくその場には適当な収容箱などはなく、保温する手段もないでしょう。
ここで野鳥を保護しようとした場合にその前に少し考えて欲しいのです。弱っている生き物を助けようというのは人道的に素晴らしいことかもしれません。しかし、野生の生き物には野生のルールがあります。生物には弱肉強食と言われる食物連鎖があり、同じ種類の生物では強いものが生き残って子孫を残し、動物たちは住処やエサなど互いに競合しないよう共生して、生物は死んでも生きても生物全体のサイクルの中で回っているのです。人が手を差し伸べることにより他の生物のマイナスになることだってあります。
保護する人側にも問題があります。技術的に誤った保護方法により助かるものが助からず残念なこととなったり、野鳥が伝染病や寄生虫を持っていることにより、人獣共通感染症の発生といった疫学的な問題もあります。
さらに、法的な規制もあります。天然記念物など環境大臣から保護指定を受けている野鳥は特定の施設や、環境大臣または都道府県から特別な許可を得ている獣医師しか治療が行えません。また、野生の鳥はいかなる種類のものでも鳥獣保護法により、捕獲だけではなく飼育も原則的に禁止されています。
ここで捕獲と誤解を招かないよう、狩猟など一般的な社会活動以外において、野鳥の飼養にかかわる法律の中から、環境省が設けたメジロなどの野鳥の捕獲許可について、2011年7月に環境省中央環境審議会野生生物部会鳥獣保護管理小委員会の「鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針」から、「野鳥の愛玩飼養(ペットとして飼育すること)目的のための特別捕獲許可」の制度廃止についてを抜粋します。
第四 6(4)愛玩のための飼養の目的
原則として、愛玩のための飼養を目的とする捕獲等は認めないこととし、都道府県知事が特別の事由(屋外で野鳥を観察できない高齢者等に対し自然とふれあう機会を設けることが必要である等)があると認める場合に限る。また、この場合においても原則として次の基準によるものとする。
なお、愛玩のための飼養を目的とする捕獲等については、今後廃止の方向で検討することとし、申請者に対して今後の検討方向の周知に努める。
- 許可対象者
自ら飼養しようとする者(当該者が飼養許可に係る鳥獣を飼養しておらず、かつ5年以内に当該者又は当該者から依頼された者が愛玩飼養のための捕獲許可を受けたことがない場合に限る。)又はこれらの者から依頼を受けた者。
② 鳥獣の種類・数
メジロに限る。許可対象者当たり1羽とし、かつ、飼養しようとする者の属する世帯当たり1羽とする。
③ 期間
繁殖期間中は認めない。
④ 区域
原則として、住所地と同一都道府県内の区域(規則第7条第1項第7号イからチまでに掲げる区域及び自然公園、自然休養林、風致地区等自然を守ることが特に要請されている区域を除く。)。
⑤ 方法
原則として法第12条第1項又は第2項で禁止されている猟法は認めない。ただし、とりもちを用いる方法であって、錯誤捕獲を生じない等、適正な使用が確保されると認められる場合は、この限りでない。
今後、野鳥の愛玩用の捕獲や飼育は禁止されるでしょう。いずれにせよ保護した野鳥は各都道府県の管轄部署に届ける必要があり、北海道では野鳥を保護した場合の届け出先はこちらとなっています。
060-8588 札幌市中央区北3条西6丁目 北海道 環境生活部 環境局
生物多様性保全課 動物管理グループ 011-204-5205
以上のことを踏まえた上で許可を受け、責任をもって保護・飼養することとなります。
一般の方が野鳥を捕獲し飼育することは、法律違反でありやってはいけないことです。ただ、実際に保護された野鳥はどのように飼養されるのかを知ることは
、どんなにそれが難しいことかを知っていただけることになるでしょう。
では、実際に弱った野鳥を発見した場合に行うことを卵、ヒナ、成鳥にわけて説明しましょう。まず収容するところから始まり、続いて観察、治療、給餌、飼養、飛行訓練、その他リハビリー、最後に放鳥という手順が組まれます。あくまで一時的な救命を主眼としており放鳥後の追跡調査は行いません。
何かを見つけた? すべてはここから始まります。

Ⅰ 収容
油汚染事故のように原因がはっきりして野鳥が発見される場合では、海岸線や海上をボートから網や直接捕獲しますが、それ以外のケースで特に陸上で発見された場合には、経緯がはっきりせず状況を見極めて捕獲する必要があります。
鳥に限れば卵、ヒナ、生育個体と過程により手掛けることは異なってきます。
卵・・・野鳥は目立たぬよう非常に注意深く営巣するので、容易に巣を見つけられないかもしくは、天敵が来ない崖や高い木の上に巣を作ります。ですので卵を拾った場合には巣を探すのは大変難しいか、危険な場所に巣があるということになります。
巣を探せなかった場合や高い木の上で巣に卵を戻せない場合、持ち帰るかその場に置くかの選択になります。その場に置く場合では、カラスや哺乳動物が潜んでいることもあります。でも万が一、親鳥が救出してくれる望みを託して、発見した近くで枯葉や草をツボ巣のように作ってその中に卵を置きましょう。鳥は嗅覚が非常に鈍いので人が卵に直接触れても親鳥は抱卵を放棄しません。
持ち帰る場合には卵を人間の体温で保温しながら移動し、孵卵器に移します。専用の孵卵器がない場合にはかなり孵化率は低くなります。小型タイプの孵卵器があります。株式会社Belbird 〒353-0004 埼玉県志木市本町 6-27-4 ℡048-473-5511
孵卵器がない場合には、温度が逃げにくい容器で温度37.5℃、湿度45%以上にする卵入れを作ります。また、人力で最低でも4時間に一度は転卵をする必要があります。
専用の孵卵器は設定した温度、湿度を管理し1時間ごとに転卵も自動で行えます。
スズメは約14日間抱卵し、伝書鳩では18日間前後で孵化します。収容卵が産卵何日後かまた、巣から落ちてどのくらい時間がたったか、何鳥の卵かなど情報はないので、拾った卵の場合では上記の状態を孵化するまで維持し、孵化しない死卵と判断する場合の目安は3週間くらいでしょう。その前に高光源を用いた透かし検査で卵の生死判断をすることもできます。もし、産卵からの日数が分かっている場合では、ハッチアウトに合わせ孵化予定の2日前から転卵をやめ、湿度を60~65%まで上げます。ハッチアウトが始まった場合、卵の短軸の円周を輪切りのようにヒナはコツコツと割れ目をつけていきます。鳥の種類によりますが殻の中から音がしだしてから、遅くとも半日くらいまでにヒナは殻から自力で出てきます。初生ヒナは保温度が低い産羽で腹部には羽がなく体温が下がりやすく、また温度が高いと乾燥するので保湿と直接保温が必要です。一日かけても殻から出られないヒナの場合は生存が厳しく、対処方法は難しい為ここでは説明を省きます。
孵卵器での管理方法
重要なのは温度、湿度、転卵、換気の4つです。
1. 温度
卵を出産後いつの時期に孵卵器に移すかには関係なく、鳥の種類によってのみ設定温度が異なります。37.2~37.8℃の間とし、主な鳥は37.5℃が孵化の適切温度です。愛玩鳥では例えばオウムの場合には37.2℃にします。
この設定は重要で、温度が高くても低くてもいけなく、1℃も狂うと卵の孵化する率が下がります。
2. 湿度
卵は丈夫な殻と内膜で保護されており、卵内のヒナには外部から直接の水分補給にはなりませんが、孵化間近やハッチアウトが始まると殻の内部とヒナの体の一部が固着することがありますので、湿度を65%以上にします。湿度の設定は室内よりかなり高く50%は必要で、孵化させる鳥種の環境がわからない場合でも最低40~50%にしなくてはなりません。
孵卵器のメーカーからはこのような指示があります。
※鳥種に関わらず孵化予定日1~4日前には湿度を約65%まで上げてください。
ただし、ヒナが発生すると濡れた羽毛が蒸発し器内湿度が上がりますので、孵化時には湿度機能はオフにしてください。
梅雨や夏季は湿度が高くなりますので孵卵器内の湿度に注意を払ってください。器内湿度が高い場合は給水の必要はありません。
3. 転卵
孵卵器では1時間ごとに転卵する設定をしますが、人力でする場合には1日最低でも4回必要です。180度回転させてはならず1回の転卵角度は90度で転卵させてください。ただし、孵化予定日の想定の2~3日前に転卵を止めて動かしてはなりません
4.換気
孵卵装置は完全密閉ではいけませんが、温度と湿度の管理上換気は最小限にします。 卵は生きていますので、酸素供給のために何日も蓋をしたままではいけません。 ただし、適切な酸素濃度%、また酸素を送る方がよいかはペンギンで試してみましたがはっきりわかりません。
孵卵器の設置場所
孵卵器を卵の状態を観察したいため、あまり生活する活動場所にはおかない方がよいです。孵卵器は外温に影響を受けやすいので、室内が20~25℃、湿度が低いところに設置してください。同じ場所でも夏季と冬季ではかなり異なります。
まず卵を入れる前に孵卵器の温度、湿度を一定にさせるためにすぐには入卵せず、 始動させてから半日ほど準備運転させてください。
つづきはヒナについて