WEB予約
電話予約
診療時間
勤務医出勤表
アクセス

院長のお部屋

地球の宝箱、マダガスカル紀行   ジャングルの擬態生物と進化の謎〜

 マダガスカルには国立公園と自然保護区が50ほどあり、世界遺産が4つあります。しかし現在、人間による環境破壊により、多くの動植物が絶滅し、残存希少種も同じ危機に瀕しています。

この地の希少種は本当に特殊な進化を遂げており、生物学的に目を見張るものばかり。まさに「地球の宝箱」のようです。日本にいては、これほどの生物多様性や特殊性を肌で感じることは難しいことでしょう。

今回は、変わった動植物ばかりのマダガスカルの中でも、私が現地の生物調査で出会った「昆虫類やクモたち」の驚くべき姿をご紹介します。

ジャングルに溶け込む擬態の天才たち

熱帯地方のこの地はジャングルに覆われており、とにかく昆虫が豊富です。

例えば、枯葉そっくりのカマキリ、20cm以上もある枝そっくりの青いナナフシ、尾の長い大きな蛾、綿毛を羽衣のようにまとったカメムシの仲間など、挙げればきりがありません。

ここで、ジャングルを歩いていた時に見つけた生物の様子を動画と合わせてご覧ください。

【クイズ】どこに何がいるかわかりますか? ジャングルを歩き回っていると、注意深く観察していても、動かず擬態している生物にはなかなか気づけません。でも、だんだん目が慣れてきた私は、自分の目でも発見できるようになってきました。

正解は……この茶色の葉、実はカマキリなのです。

角度を変えて見ると、きれいな色をしているのが分かります。この種はマダガスカルカレハカマキリ(Brancsikia freyi)のメスです。マントのように羽織った翅(はね)がメスの特徴で、腹部がぽってりと幅広です。オスも同色ですが、もっとスマートな体型をしています。腹部の節の数で明確にオス・メスを確定できますが、外観だけで十分判別できますので、触らずにそっとしておきましょう。

この時、カマキリは私に気づいて警戒し、鎌を持ち上げてこちらをにらんでいました。よく見ると、右側の枝には産卵された卵(卵嚢)が付着しています。

日本では、映画のタイトルにもなった「カマキリ夫人」という言葉があります。交尾後にメスがオスを食べてしまう生態から、男を骨までしゃぶりつくすような悪女の例えに使われますが、野生下では飼育環境と違ってオスが逃げることができるため、メスがよほど空腹でなければ。必ず食べられるわけではありません。現地のガイドも「マダガスカルではそんな姿は見ない」と言っていました。それでも、見かけはやっぱり少し怖いですよね。

夜空を舞う彗星と、怪奇な「カニ」の正体

昼間、木の幹にひっそりとたたずんでいたのは、芸術的な美しさを持つ蛾でした。

マダガスカルオナガヤママユ(Comet moth)。その名の通り「コメット=彗星」のように、流れ星のごとく長い尾を引いていることから名付けられました。尾を含めた長さは30cm近くに達します。マダガスカルにしか生息していない極めてまれな姿で、思わず見とれてしまいます。翅にある丸い模様は、天敵を威嚇するための「眼状紋(がんじょうもん)」という警戒信号です。

そして、葉の上で私の目を釘付けにしたのが、この不思議な生き物です。

「水もないのに、なぜ葉の上に小さなカニがいるのだろう?」

そう思って記録し、後で調べてみると、これは昆虫ではなくコガネグモ科トゲグモ属(Gasteracanthaの仲間)のクモでした。正確な学名は不明で、もしかすると新種かもしれません。

このカニの甲羅のように固い体型は身を守るためのもので、腹部をガードしています。さらに甲羅には棘(とげ)もあり、鳥などに捕食されるのを防いでいるようです。  ド派手な体色は、自身が危険物体であることを表す「警戒色」。実際に、獲物を捕獲する際には軽度の麻痺性毒を使っています。

ちなみに、このド派手な姿をしているのはメス(体長10mmほど)だけで、オスには棘もなく、色も地味で、サイズはわずか1.5mmしかありません。私は大のクモ嫌いなのですが、このトゲグモは見た目がカニに近かったおかげで、なんとか我慢して観察することができました。

※余談:私のアラクノフォビア(クモ恐怖症)  日本には、カニの爪のような脚で餌を捕まえる「カニグモ」という普通のクモがいますが、あれは私には絶対無理です。    私のような大のクモ嫌いのことを英語で「arachnophobia(アラクノフォビア)」と言います。アメリカではこれが病気(恐怖症)として扱われ、治療も行われているそうです。 その治療法とは「クモが出るDVDを見続ける」というもの。 冗談じゃない!私なら心臓マヒで死んでしまいます。

生物学の深遠なる謎「収斂(しゅうれん)進化」

このトゲグモの動きを観察していると、カニのような横歩きではなく、前後に動きます。やはりカニではない証拠です。そもそもこのジャングルの環境にカニはいませんから、カニに擬態したわけではなく、単にカニに似た形態へ独自に進化したのでしょう。

これは生物学で言う「収斂(しゅうれん)進化」だと思われます。系統が異なる生物が、似た環境や生態的地位に適応する過程で、そっくりな形質を獲得する現象のことです。例えば、コウモリと鳥類、ウナギとウミヘビ、ハリネズミとヤマアラシなどがその代表例です。

私はこれまで生物学を志し、その道を探求してきましたが、知れば知るほどこの進化の謎には驚かされるばかりです。

なぜ、イルカ(哺乳類)と、マグロ(魚類)と、ペンギン(鳥類)が、同じ海で魚を捕らえて生きるために、これほど同じ形態(流線型の体)へ進化できたのか。完全に異なる生物種でありながら、同じデザインにたどり着くそのメカニズムのセンスには、いくら考えても私の頭では計り知れない神秘を感じてしまいます。

マダガスカルの自然は、そんな生物進化の奇跡を、今も目の前で見せてくれるのです。

現地の臨場感あふれる映像は、以下のURLからぜひご覧ください。

【動画URL: [ここにURLを挿入] 】

おすすめ記事