カメレオンといえば、不思議だらけの生き物です。
体長の2倍もある長い舌、それを時速100㎞で発射する機構、左右別々に動く眼球、掌がなく2本に見える5本の指、そして前足と後ろ足で指の組み合わせが異なる点など、挙げればキリがありません。
その中でも、やはり代表格といえば「体色の変化」でしょう。
💡 体色変化の科学:じつは「構造色」だった!
かつてカメレオンの変色は「皮膚の色素の移動」によるものだと古くから言われてきましたが、2015年にその常識を覆す発見がありました。実は、細胞内のナノ結晶による「構造上の仕組み(構造色)」だと分かったのです。
簡単に説明します。カメレオンの皮膚には、色素細胞と反射細胞が層状に並んでいます。
- 色素細胞: 黒・赤・黄色・白などの色素を持ち、広げたり集めたりして色の濃淡を調整(例:黒色メラニンが広がると暗く、収縮すると明るく見える)。
- 反射細胞: グアニン結晶(ナノ結晶)を含み、光の反射や屈折をコントロールして、鮮やかな青や緑を作り出す。
これらを神経刺激やホルモンの作用で制御し、光の反射を自在に変化させる……。
カメレオンは、まさに天然の高度なプロジェクションマッピングを搭載しているようなものです。自分の意志で一瞬にして色を変える姿は、まるでCGか未来の生き物のよう。その進化の歴史には、神秘という言葉しかありません。
これまでもブログでカメレオンの写真をお届けしてきましたが、彼らは色で「感情」を表現しています。
ここからは、現地で出会ったカメレオンたちの画像から、彼らの心情を一緒に想像してみましょう!
おやすみモードの「パーソンカメレオン」(若いオス)

夜間のカメレオンは、ほとんど隠れることをしません。このように丸くなって、堂々と木の枝にしがみついています。
体色が綺麗な緑色になっているのは、リラックスしている証拠。周囲の緑に溶け込み、目立たないようにしているのでしょう。夜間は天敵が少なく、エサとなるバッタ類も活動していないため、静かにおやすみモードに入っているのですね。寝ている時のこの状態を生物化学的に考えると、夜間は皮膚の格子細胞が縮み、ナノ結晶の間隔が狭くなります。すると波長の短い青や緑色を反射します。また、その時に結晶は規則正しく密に並ぶので、高輝度となり鮮やかな緑などに体色がなるのです。これを学術的には夜間発色 Nocturnal colorationと呼んでいます。
夜間でも茶色など濃い色に変化している時は、ライトで照らし続けたか、触れたりしてカメレオンを起こしてしまった証拠です。睡眠時に照明で照らされる気持ちはわかりますね、なるべくそっとしてあげましょう。

顔を拡大すると、左右の鼻の先に角状の突起が見えます。まだ若い個体なので小さめですが、下顎の青い色彩、左右の角、そして立派なカスク(頭部のトサカ状の突起)は、まさにパーソンカメレオンのオスらしい特徴です。
睡眠中ですzzz:
寝ているところを起こしてゴメンナサイ……。彼らは睡眠モードに入っているとき、ライトで照らしても動かず、逃げません。脳が停止した睡眠状態では体色を変化させることは出ません。完全に「スイッチOFF」の状態。自己の意志を表現する必要がないときは、変色もしないのです。それにしても、暗闇の中でこれほど美しい姿を見せてくれるなんて、寝姿が素敵すぎます。
修羅場!?怒れる「パンサーカメレオン」のオス

カラフルな体色、側面のくっきりとしたライン、 立派なカスク。
全体的に濃いめの色を出して、体勢を低くしこちらをじっと凝視しています。これは明らかに敵対視しているポーズです。次の瞬間には飛び掛かってくるか、大きな口を開けて威嚇してきそうな緊張感が漂います。
なぜ、彼はこんなに怒っているのでしょう? そんなに私が嫌い?
実は、画像の左奥(ピントがボケている部分)に原因が写っていました。……メスがいたのです!
よく見るとそのメスは体色が明るくなり、目の周り(アイタレット)が鮮やかなオレンジ色になっています。これは発情している証拠であり、いわゆる「婚姻色」です。普段のメスは地味な茶色などの保護色なので一目瞭然。これではオスが(恋路を邪魔されて)怒るのも当然ですね。失礼いたしました。
撮影時のボケボケ話:
偶然にもオスとメスが同じアングルに収まっていたのは奇跡的だったのですが…… 実は撮影している最中、現地では奥にメスがいることに全く気づいていませんでした(笑)。画像を編集している時に「おやっ?」と気づいたのです。現場で私は一体どこを見ていたのでしょうか……ボケていますね😢 シャッターチャンスだったとは言えますが、気づいてしつこく追い回さなくてよかったです。
カップルのお邪魔をしてしまい、本当に申し訳ないことをしましたm(_ _)m
キュートな勝負服?「パンサーカメレオン」のメス

こちらは先ほどの、綺麗なオレンジ色をしたメスの個体です。大きさは胴長10cmほどで、下を向いていました。
離島の「ノシベ(Nosy Be)」にある保護区で発見したのですが、この地域はカメレオンの多様性が豊かです。
一見すると目立つ派手なオレンジですが、よく見ると右側に同じような色の枯葉があります。おそらく、この体色も「枯葉系の保護色」として役立っているのでしょう。下を向いてじっとしているのも、枯葉に擬態していたのだと思います。
そう考えると理にかなっていますが、「発情中で、ボーイフレンドに声をかけられないかウキウキしているのかも?」なんて想像も膨らみます。若い女の子が可愛いカラフルな服を着ておめかししていると思えば、なんともキュートな生き物に見えてきませんか?
地上を歩く「パンサーカメレオン」のオスと、マダガスカルの多様性

カメレオンといえば木の上のイメージですが、このように地面を歩くことも珍しくありません。上ばかり探していると、足元にいてアッと驚くこともあります。
この個体は、苔むした地面に擬態し、警戒しながら木を探して移動していました。明るい場所では皮膚の黒色色素細胞を収縮し、体色を明るく(明色化)させています。ちなみにメスの場合は、産卵の時に土を掘るために地面に降ります。
産卵についての豆知識;
ここで少し、マダガスカルのカメレオンの分類についてお話しします。マダガスカルに生息するカメレオンは、 大きく分けて以下の3つの属に分類されます。
| 属名 | 代表種 | 特徴 |
| フルシファー属 | パンサーカメレオン など | 鮮やかで大型、多様な色彩 |
| カルマ属 | パーソンカメレオン など | 重厚感があり、長寿な種も |
| ブルケシア属(ヒメカメレオン) | ナノヒメカメレオン など | 世界最小級、地表性が強い |
マダガスカルのこれら3属はすべて「卵生(卵を産む)」です。
しかし、孵化するまでの期間には驚くほどの差があります。
- パーソンカメレオン: 孵化までなんと約2年!
- ヒメカメレオン: 孵化まで2ヶ月前後。
同じ環境、同じ島の中で、これほど種によって戦略が異なることに、生物の多様性の奥深さを感じずにはいられません(ちなみに、アフリカ大陸にはジャクソンカメレオンなどの「胎生=子供を産む」種類もいますね)。
色を変えることで、ある時は背景に溶け込み、ある時は感情を豊かにさせるカメレオンたち。現地で彼らのリアルな表情を見るたびに、その進化の神秘に圧倒されます。みなさんには、彼らのどんな「心の声」が聞こえましたか?